院長インタビュー

詳しい院長紹介 ~院長 萩田の矯正医としてのこれまで歩みについてインタビュー~

当院「恵比寿エスト矯正歯科」は恵比寿駅東口から徒歩2分、1階にはお洒落な雑貨店が入るビル、そんな街並みのなかにあってもまったく違和感のない、ファッショナブルなインテリアを意識した医院です。院長の萩田洋児は、広島と東京で長年矯正治療の実績を積み、11年前にここ恵比寿で開業しました。実は学生時代「歯科の勉強がつまらなくて仕方なかった」という院長萩田。しかし次第に矯正治療の面白さに目覚め、今は誰よりも熱く矯正歯科について考えております。

先生が歯科医師を志したきっかけを教えて下さい。

こんな話しをしていいのか、実は私は大学に入るまで、歯医者には全く興味がなかったんです。親族にも医療従事者もいませんでした。ただ、のんびり屋で頑固者の私を見ていた父の勧めで歯科大を目指すことになったのです。

「こいつにはサラリーマンは絶対無理だろう」と言っていました(笑)。確かに自分でもサラリーマンは難しそうな気がしていたし、何か手に職がつく仕事が向いているのかなとも思っていました。それで福岡歯科大学に入学したのです。

入学した歯科大学の授業はいかがでしたか?

授業中はいつも「歯医者ってなんだかつまらない仕事だなあ」と思っていました。理由は、歯は一度虫歯になるともう元に戻らないんですよ。骨折はまた繋がりますが、歯は、虫歯で穴があいたらあきっぱなし。私ら歯科医師にできることは、ただ悪いところ を削ってそこにものを詰めることぐらいで。

それでもまた虫歯になったら抜歯して、最後は総入れ歯。悪くなっていく状況をただ手をこまねいて見ているような気がして、もっとほかに医師としてできることはないのだろうか、と思っていました。ところが私は出会いました。

何に出会ったんですか?

私は出会ったんです。矯正の授業に出て初めて授業の楽しみを感じたんです。矯正とは、大体にして歯並びのみの治療と考えられていましたが、それだけではないと思いました。矯正治療をし歯を正しい位置にすることにより、噛み合わせが良くなります。すると食べ物が詰まりにくく歯周病になりにくい歯並びと歯茎が形成されるのです。

早くから矯正治療に取り組めば、一生自分の歯で過ごすことも可能になります。矯正治療に出会って心から良かったと思いました。そうなると授業がこれまで以上に面白くなり、卒業後は矯正治療の実績をしっかり積むため、広島大学の歯科矯正学教室に進むことに決めました。そのとき実は、友人たちに「なんで矯正に行くの?」とさんざん言われたんですよ。と言うのも、当時まだ 矯正治療はマイナーな存在でした。

一般歯科で開業することが誰もが目標としていた時代でしたから、完全に変わり者扱いです。でも、そんなことはどうでもよかったんです。自分は矯正でやっていく!と、広島大学で教授の下について現場で勉強を重ね、後に矯正歯科学会認定医の資格を取得することが出来ました。

その後東京に来られたんですか?

そうです、新宿にある矯正専門の大きな医院に勤めておりました。ところがここが非常に個性的な所だったんです。毎日ドクター間でカンファレンスが開かれ、 患者さんの治療方針について侃々諤々(かんかんがくがく)の議論が繰り広げられていました。それはそれで良いのですが、治療方針について意見がそぐわないと興奮してしまい。それだけ真剣に取り組んでいたということなのですが、とにかく熱い所でした。

先ほども申し上げたように、当時まだまだ矯正に進む医師は稀だった時代。それだけに、それぞれの医師が自分の方針に強い信念を持っていたんですよね。自分の行きたい講習は自費で有休を取って参加してましたし、毎日さまざまな治療技術を身近に見て学んだことが、非常に良い勉強になったと思います。約9年間、このクリニックで技術を磨いていました。

何故、開業の地に恵比寿を選んだのでしょう?

矯正治療を希望する人が通院やすい地域として、渋谷を起点とした、東横線や田園都市線沿線での開業を考えていました。わざわざ物件を見て回りやすいようにということで恵比寿に引越して来きました。

そんなある日、恵比寿の街を散歩していると、建築中のこのビルを目にしたんです。実は「契約済」という紙が貼ってあったのですが、どうしても諦め切れず不動産屋に直接出向いてみたんです。そうしたら、「あんまり問い合わせが多いんであんな紙を貼りましたが、本当はまだ受け付けていますよ」とのこと。運命を感じましたね。それからはとんとん拍子に話が決まって開業に至ることが出来ました。

内装に関してよく「エステサロンや美容室のようですね」とよく褒めていただきますが、実際に美容室などもデザインされている設計事務所にお願いしました。患者さんは、決して高額な金銭を払って美しい歯並びを得るために来院されるわけですから、それにふさわしい環境でお迎えするのは当然のことと考えています。

面白かったのは、設計のとき、私が棚は「あと3センチ長く」と指定を出すと、「矯正の先生はみなさんそうやって、1センチ単位で希望を出されるんですよ」と言われたことでした。やっぱりどの矯正の医師も見た目の美しさに妥協がないんでしょうね(笑)。

先生のクリニックではどんなことをコンセプトとしていますか?

一般歯科の先生が虫歯などの診療と併行して行う矯正治療とは違い、私は矯正を専門としている歯科医師ですので、たとえば歯の裏側から装置を付ける裏側(リンガル)矯正、通常より短期間で行う治療期間の短縮が可能な装置を用いた矯正など技術難易度の高い治療法を含め、当院では矯正歯科としてあらゆる治療例に対応できることが大きな特徴です。

ちょっとだけ専門的な話すると、実は矯正の治療法って、どこか頑迷な、宗教に近いようなところがあるんですよ。アメリカのドクターを起源として、 それぞれの学派ごとにゆずれない”治療の美学”みたいなものがあるんです。年配の先生方はそれを、「私の矯正哲学は」なんておっしゃる方も多くいるのですが、そういう話を聞くと私は「違うんじゃないかな?」と思ってしまうんです。「矯正は哲学ではなく、科学ではないか」と。1本の歯があって、その隣にまた歯があって、すると次の歯はここに来る、そういうふうに自然に導かれる位置があるんですよ。そこに歯を持って行くことが、矯正治療の基本だと思っています。

「絶対抜かない」とか「必ず上下4本ずつ抜く」とか最初からやり方を決めて患者さんに向かう矯正医師の方もいますが、私はそういう決めつけはせず、自分の理論に患者さんの歯を合わせるのではなく、可能な限り客観的で科学的に歯を眺めて歯並びを作ること。それが結果的に、美しく、そして「一生自分の歯で咬める」ような、健康的な歯並びを形成していきます。どんな治療を行うときでも、それが私が一番大切にしていることです。

お忙しい日々のなか息抜きにはどんなことをしていますか?

開業からの3年間は、医院を軌道に乗せることで精一杯で、仕事以外集中出来ませんでした。昔はよくゴルフをしていたんですが、 この3年間はほとんど行くことが出来ず、友だちともあまり会うことができませんでした。家も恵比寿にあるので、一歩も恵比寿から出ないまま1週間が経っていなんてしょっちゅうでした。

3年経って、現在は医院も軌道に乗って来たので、また趣味を復活させたいと思っています。恵比寿の街の飲食店オーナーさんたちと知り合う機会が増えたので、そのお店を訪ねたり、ジム通いも始めました。

一つ嬉しいことは、私は若い頃、ずっと東京に憧れていたんですよ。だから広島で学んだ後、「東京で働きたい!」と東京へ出て来たのですが、実は父も若い頃、本当は東京に出て一旗揚げたかったらしいんです。いろいろな事情で名古屋で職に就くことになったのですが、本当は東京に出たかったという話はよく聞いていました。だから、今、何の因果か息子の私が東京の中心地でこうして自分の医院を経営していることを、とても喜んでくれています。これは私にとっても嬉しいことです。

このお仕事をしていて、一番の喜びはなんですか?

ありきたりな答えかも知れませんが、治療が終わってから患者さんに感謝の言葉を頂けたときです。それが一番嬉しい瞬間ですね。「きれいな歯並びになって嬉しいです!」とか、「しっかりものが噛めるようになりました!」とか、「先生に治してもらったおかげで結婚相手が見つかりました!」なんて言われたこともあって、もちろん矯正だけが理由ではないに決まっていますが、でも、励みになる言葉ですよね。

今後の目指すところはなんですか。

3年前に2台の診察台からスタートして、現在は3台。医師も、最初は私一人で始めましたが、現在は非常勤の医師にも来て頂いています。もう一人医師がいることによって、治療方針を立てているときに「この治療例、先生ならどう治療します?」と話し合えるようになったことはすごくうれしいですね。今になって開業時の理想とした体制がすべて完成されたと感じています。

これからもこの体制を持続していくこと。それが今の目標ですね。ただ、それは安穏としていては不可能なことだとも思います。矯正治療の進歩は日進月歩です。

常に最新の技術や知識を取り入れることが必須であり、そのために意識的に多数の勉強会に出席するようにしていますし、国内にとどまらず、海外で開かれる研修にも参加するようにしています。

少し話は変わりますが、医療の世界には「ゴールデン・スタンダード」と呼ばれる思考があります。どういうことかと言うと、治療をするときに、自分の家族や親友に対して「これはできない」と思うような治療方法は、患者さんに対してもしてはいけない、ということ。時に医師は自分の理論を患者さんの身体で実践してみたいという誘惑に駆られますが、患者さんは医師の道具ではありません。最新の知識を取り入れつつも、常にこのゴールデン・スタンダードを大切にして、バランスの取れた矯正治療を今後も目指して行きたいと思います。